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スペシャルインタビュー
飯島勝矢

現場で見えることだけが医療とは限らない! 視野を広げる重要性

飯島 勝矢 氏

東京大学 高齢社会総合研究機構准教授
内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員

少子高齢化が進み地域医療の重要性が謳われる、昨今。
高齢になってもイキイキと自分らしく過ごすことに、人々の関心が寄せられている。
東京大学 高齢社会総合研究機構で老年医学および総合老年学を研究する飯島勝矢先生は、高齢者が元気に生活するための「快活なまちづくり」実現に向けて、地域域包括ケアシステム構築を目指している。また、東大病院での外来や在宅医療の現場、一億総活躍国民会議へ有識者民間議員としての参加、全国での講演会など幅広い場で活躍する。
今回は、超高齢社会を目の前にして、ますますの活躍が期待される飯島先生にお話を伺った。

大学を変えて、老年医学の道へ


老年医学の研究者として、さまざまなフィールドで活躍する飯島先生だが、もともとは循環器内科でカテーテル治療を専門に行っていた。
「僕は、途中で大学を変えているんです。千葉大学の循環器内科入局なのですが、千葉大の附属病院には1年在籍していただけで、2年目からは亀田総合病院でカテーテル治療をはじめたんです。しかし、年数が経つにつれ研究によっての学位取得を意識しだしたんですよね。そこで、千葉大のその当時の教授には事後報告になってしまったのですが、東京大学に行って研究も行うことになりました。案の定、教授には一時期はあまり良い顔をされませんでしたね。しかし、「国内留学だと思ってください」と言って出てきました。でも、半分、家出みたいなものでしたね。そんな経緯で東大に来ましたので、何も結果を残さないまま古巣の大学に戻りますと「お前、東京大学で一体何やってたんだよ!」って言われることも想像はしておりました。ですから、簡単には戻れないなあと思っておりました。
カテーテル治療もすごく魅力的でやりがいもあったんです。でも、それだけでは、どうにもならない人もいる。体だけではなく、その背景、家族、住宅、そして最後にはその方が住んでいるコミュニティという部分が気になり出したのです。カテーテル治療のような循環器のど真ん中だけではなく、ちょっと違う視点のフィールドに興味を持ちはじめた。そして、自分の方向性として、東京大学の老年医学の分野で頑張ろうと腹を括ったわけです。全く後悔はないですよ」
この思い切った決断がその後の人生を変えてゆく。

モデルフィールドを作り、そこから全国へ

その後、飯島先生は東京大学加齢医学講座講師となり、米国スタンフォード大学に研究員として留学し、帰国後には同所属(東京大学医学部附属病院・老年病科)の医局長、病棟医長、外来医長などを歴任。平成21年4月、正式に立ち上がった東京大学高齢社会総合研究機構のメンバーとなる。
「この研究機構ではコミュニティにおけるモデルフィールドを設定し、高齢者における諸問題の解決を行っています。
1つのモデルフィールドとして千葉県の柏市を“柏モデル”とし、市民団体、行政、個々の専門職能団体(医師会、歯科医師会、栄養士会、等)など全てを交えて、総合知によるまちづくりを行っております。
また、機構では、今、約40~50社ほどと提携し、ジェロントロジーネットワークを作っています。そこにはIT企業、ヘルスケア企業、食品会社、不動産業界など多方面の企業が参加しています。例えば、不動産業界ならば、住宅政策(都市計画や建築計画などを含む)と医療政策をセットで考える必要があります。自宅で家族と一緒に終末期を迎えるのが幸せなのか、サービス付き高齢者向け住宅に入れば家族の負担は減るけれど、本人にとって幸せなのか。それは医療だけで考えても答えは分からないことです。他業種・他分野とともに問題を考えることで見えてくることもあります。それにより、地域に根差した施策を考えることが出来るのでしょう」
飯島先生が行うのは“アクションリサーチ”というもの。日本語にすると課題解決型の実証研究だ。超高齢社会を見据えて、コミュニティ生活における諸問題を地元の方々と課題から解明し、得られた知見を世の中に還元し、多方面に広げてゆく。
飯島先生が“柏モデル”を作り上げることにより、他の地域も意識して参考にしてゆく。現在、政治家や厚生労働省、国土交通省の役人、地方自治体など柏への視察は年間200件以上あるそうだ。着実にその輪は全国に広がっている。

フレイルという言葉を浸透させる

飯島先生は、地域包括ケアシステムの構築と同時に、虚弱を意味する“フレイル”を予防する活動も行っている。
「虚弱という言葉は非常にマイナスイメージで聞こえるのです。ウチの80代の母なんかは「自分は虚弱であることは分かっている。しかし、第三者に虚弱と言われたくない」と言うんです。そういう、虚弱のイメージを変えたいと思いました。メタボ、ロコモという言葉がメジャーになってきているので、個人的にはカタカナ3文字で表現できる言葉がないかとも考え、われわれ日本老年医学会は虚弱~弱弱しいという意味の英単語“frailty”から“フレイル”という言葉で表現しようと2014年5月に声明を出しました。
正直言って、老いにはなかなか勝てないんです。だから、上手に老いる(すなわちウィズ・エイジング)ことを考えていかなければいけない。膝が痛いなりに、楽しく散歩をする。気持ちよくスーパーで買い物をする。それは虚弱になってからはできない。メタボ、ロコモのようにフレイルという言葉も高校生からお年寄りまで言葉が広がることで、結果的に予防につながっていくと思います。すなわち、国民の予防意識を高めることになって欲しいです。そして、2016年5月末に発表された『ニッポン一億総活躍プラン』の中にフレイル対策が盛り込まれた。ということは、このフレイル対策は大きな国家プロジェクトの一つになっていくということですね」
飯島先生は“フレイル”という言葉の浸透をはじめ、柏市で『フレイル予防プロジェクト2025』を掲げ、市民フレイル予防サポーターを育成、市民同士でフレイルチェックを行うシステムづくりを行っている。現在、そのシステムは全国の自治体でも取り入れられている。

後頭部を鈍器で殴られるような思い

地域に根差した医療を考える飯島先生。
今のように裾野の広い活動を行うようになったのは、ある人物の言葉があった。
「アクションリサーチをしてエビデンスを出すだけじゃなく、地域に落とさないといけない。そう思ったきっかけがあるんです。
機構の直属の上司に、辻哲夫先生という元厚労省の事務次官の方がいるんです。
僕が機構に来た翌日、ミニ勉強会があったんですよ。そこには、僕と辻先生と他にも企業の方が何人かいらっしゃいました。その時のテーマは偶然にもロコモだったのです。整形外科の先生が1時間レクチャーし、残り1時間フリーディスカッションしたんですよ。
機構には僕しか医師はいないため、僕と整形外科の先生と医師同士ディスカッションは盛り上がったんですよ。
それで、医師同士で医学的な話題を20分ほどしていたら、辻先生が「一つシンプルな質問させてもらっていい? ロコモは国民何人に1人知っていますか?」と整形外科の講師に聞いたのです。今でこそかなり普及してきましたが、まだあの当時は知られていないですからね。その先生も「いや~まだまだ普及しておりません。それこそ30人から40人に1人知っていれば良いくらいですかね」と答えたのです。
すると辻先生が「じゃあ世の中何も変わらないね。病名を細かく言っても国民はよくわからないよ。何でもっとシンプルに国民に分かってもらおうというイメージ戦略をやらないの」って言ったのです。
その講師役の先生はショックを感じていたようでしたが、同時に辻先生の横にいた僕も後頭部を鈍器で殴られたような衝撃がありましたよ。数日前まで、医学部の大きな組織におり、病院でも働き、基礎研究や臨床研究を精力的にやって論文も書き、新薬の治験などもしてきたけれど、それはそれで重要だった。でも、もっと地域や国民一人一人に直接フィードバック出来、最終的には地域に根付くメッセージを構築したいと思いました。
辻先生は、僕と2人の時「私は政策技術者で長年やってきた、すなわち、言い換えればパリコレのデザイナーだ」というコメントを聞いた時がありました。それを聞いたときは「突然、何を言ってるんだろう?」って思うじゃないですか…。
「今年は、国民に黄色の洋服を流行らせたい。どんな生地を使うのか、どんな形でいくのか、君が考えるんだ。黄色が流行り、2,3年経ったら、今度はオレンジの洋服を流行らせたい。生地はどうするか、どんな形にするのか、それまた君達が考えてごらん」って話してくる。
最初に来た時は「何これ? この難しい問題、この投げかけ、何を意味しているのだろう?と思いましたが、いずれ今の僕のフレイル予防研究活動の話につながるのです。すなわち、学術研究により、精緻なデータを収集し、しっかりとしたエビデンス構築を行うことも重要ですが、同時に、国民にどのようにメッセージを伝えようか、どのように工夫をすると国民自身に気付きや自分事化が起こり、フレイル予防~健康増進に向けて意識変容、そして行動変容を起こすのか、そのような視点を真剣に考えました。いわゆる戦略研究を仕組もうと思ったわけです。いやいや、辻先生のお言葉には考え方を考えさせられましたね。
よって、現在の活動のきっかけとなったのは、「ロコモは国民の何人に一人知っているの?」という上司の一言だった。しかし、そのちょっとした一言が僕自身の考え方を変え、モデルフィールドである柏市だけではなく、日本中を変えようと思い、ダイナミックなアクションリサーチに踏み出している理由がそこにあるのです。


飯島先生は自身の経験を踏まえ、若手医師に広い視野を持ってほしいと言う。
「論文を書くことを決して否定はしません。もちろん必要なことだと思います。しかし、医学部だけにいると、国民にどうフィードバック出来ているのか、あんまり実感できない部分が少なからず存在します。学位作業のために研究をして論文を書いて出す。それも重要な時期がありますが、そこからさらに一歩踏み出して欲しいです。世の中の地域にいる杖歩行のおじいちゃん、おばあちゃんに我々の研究成果を反映させたいですよね。
やはり、広い視野で見なければいけないですよね。若手ドクターも一息ついたときに、別の角度から自分の研究分野を見て、地域だったり、行政だったり、いろんなフィールドで医者も頑張れるんだということを考えてほしい。さまざまな角度にアンテナを張ることで、できることもあるはず。ヒントは実は身近なところに転がっているのかもしれませんね」
どれだけ良い研究をしても、本当に必要としている人のもとに届かなければ意味がない。これからの若手医師の参考になるお話がうかがえたのではないだろうか。

(取材・文/舟崎 泉美)

飯島 勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構准教授 内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員)

プロフィール

平成2年東京慈恵会医科大学卒業。東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座講師、米国スタンフォード大学循環器内科研究員を経て、現職(東京大学 高齢社会総合研究機構 准教授)。内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員。
専門は、老年医学、総合老年学(Gerontology:ジェロントロジー)、特に、フレイル(虚弱)予防のための大規模コホート研究およびシステム構築、在宅医療を基盤とする多職種連携推進を軸とする地域包括ケアシステム構築および医学教育、循環器病学、動脈硬化(血管石灰化を基盤とする動脈壁硬化、高齢者短期血圧変動)

資格、他

日本医師会 かかりつけ医機能研修制度 委員
東京都医師会 地域福祉委員会 副委員長
日本老年医学会 老年病専門医、代議員
日本循環器学会 循環器専門医
日本動脈硬化学会 動脈硬化専門医、評議員
日本内科学会 指導医、内科認定医
日本未病システム学会 未病医学認定医、理事、評議員、編集委員長

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