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命に関わる重症先天性心疾患 パルスオキシメーターで早期発見

[2024.9.11]

 生まれつきの心臓病の中で、すぐに治療をしないと亡くなったり、後遺症が出たりする病気は「重症先天性心疾患(CCHD)」と総称されている。早期発見を目指し、日本新生児成育医学会などが2023年8月、全ての新生児を対象とした検査の手順をまとめ、実施を提案した。

 

 CCHDの発症頻度は、新生児約300人に1人とされる。全身に血液を送り出す左心室などに異常がある「左心低形成症候群」や、心臓につながる二つの動脈の位置が逆になっている「完全大血管転位症」など。いずれも、生後4週間までの新生児期に治療をしないと命に関わるため、早期発見が重要となる。

 

 現在、国内では出生前の検査「胎児心エコー」が普及しており、妊婦健診で、胎児に心疾患が疑われた場合などに行われ、超音波で心臓の形や血液の流れを確認する。

 ただ、超音波検査には限界がある。国内で18~19年に行われた研究によると、出生前に診断できたCCHDは4割で、病気の種類によって1~7割とばらつきがあった。

出生後、血中の酸素不足で皮膚が青紫色になる「チアノーゼ」があっても、医師がCCHDを疑わず、診断が遅れてしまうケースが少なくないという。

 

 今回の提案は、出生前の検査でカバーできないCCHDを早期に見つける狙いがある。

 参考としたのは米国の取り組み。11年、米国小児科学会は、全ての新生児の血中酸素濃度(酸素飽和度)を「パルスオキシメーター」で測定する検査を提案したもので、値が低いと、心臓や肺の病気が疑われます。

 

 

 日本新生児成育医学会などが提案した手順は、生後48時間までに、足にセンサーをつけ、数分間測定。血中酸素濃度の最高値が95%未満の場合は、CCHDが疑われ、専門医への紹介を検討する。

 提案をまとめた、静岡県立こども病院新生児科長の中野玲二さんは「この検査が多くの施設に広がることで、チアノーゼの症状があるCCHDの診断が遅れることが減り、多くの赤ちゃんの救命につながります」と意義を話す。

 

 ただ、同医学会が17年、出産を扱う医療施設に実施した調査では、人員の不足や、検査費用の確保など、普及への課題は残る。

 「松田母子クリニック」(埼玉県所沢市)は5月、この手順に基づいた検査を始めた。生後1日が経過した時点で、新生児室で助産師らが計測。検査費用はクリニックの負担。同クリニック院長で日本産婦人科医会幹事長の松田秀雄さんは「採血と違って痛みもなく、効果も示されているのに、コスト面の問題から導入しない施設もあります。どこで生まれても速やかな治療に結びつくよう、検査費用の公費補助を求めたい」と話す。

 


 


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