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税理士が話す、勤務医のための確定申告
「一時所得編」2014.10.28
執筆:諸留 誕(2014.10.28掲載)
馴染みは薄いが、中身は濃い
所得税法では「所得※」を10種類に分類しています。今回のテーマは「一時所得」です。
あまり馴染みはないかもしれませんが、意外にも内容盛りだくさんな所得です。
※そもそも所得とは、「あらたに得られた経済的価値」と考えられています。
平たく表現すると、「お金が増えたなぁ」というものです。
物議を醸す3要素
突然ですが、所得税法の定めを見ますと、一時所得には3つの要素があることがわかります。
① | ・・・ | 利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得以外の所得であること |
② | ・・・ | 営利を目的とする継続的行為から生じた所得でないこと |
③ | ・・・ | 労務、その他の役務、資産の譲渡の対価としての性質がないこと |
いきなり所得税法を持ち出しましたので、独特の表現に面食らったかもしれません。ここで一番押さえておきたいことは、一時所得には「継続性がない(≒たまたま偶然)」という要素があることです。
これがのちに物議を醸します。
なお①を眺めていると、所得の分類にあたっては、まず8種類の所得への分類を試みたうえで、それでも分類できない場合にはじめて一時所得を検討する手順が見えてきます。
一時所得に分類されない場合はどうなるのか。雑所得です。
行き場を失った「最後の所得」というのが、雑所得の悲しき位置づけです。
納税者思いの計算方法
一時所得について、税金の対象になる所得金額の計算方法を示します。
収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除50万円
前述のとおり、一時所得は「継続性がない」所得であることから担税力(税金の負担を受け持つことができる力)が低いと考えられています。
そのため、特別控除として50万円の控除額が用意されています。
控除してもなお所得が残る場合には、総合課税として給与等の他の所得と合算されますが、
その前にはさらに2分の1を乗じることができるという優遇ぶりです。
たとえば、保険金
まずは一時所得の代表例として、「受取保険金」を取り上げます。
自身が契約者として保険料を払い込んでいた保険について、
満期保険金や解約保険金※を受け取る場合、その保険金は一時所得として課税の対象になります。
※一時払養老保険等で保険期間等が5年以下のもの及び保険期間等が5年超で5年以内に解約されたものは取扱いが異なります
前述の計算方法に照らせば、「受取保険金-既払込保険料総額-特別控除50万円」の2分の1が、総合課税として給与等の所得と合算されます※。
※一時金での受け取りを前提にしています。年金で受け取る場合には取り扱いが異なります
ハズレ馬券にも「億」の価値
一時所得の例として、「競馬や競輪の払戻金」も挙げておきます。
競馬や競輪に興味があるかないかはさておき、最近ニュースでも取り上げられた注目の所得です。
国税当局では競馬や競輪の払戻金について、一時所得とする見解を示しています。
競馬を例にするのであれば、課税対象となる所得金額は「当たり馬券の払戻金-当たり馬券の購入費―特別控除50万円」の2分の1になります。
この際のポイントは、購入費として引くことができるのは「当たり馬券の」購入費だけというところ。
ハズレ馬券があっても、その購入費は引くことができないのです。
これが前述の計算方法で下線を引いていた「収入を得るために支出した」の意味するところです。
一方で、「ハズレ馬券の購入費も引くことができる」とする判決が出たとして、ニュースが報じられました。
この判決の訴訟を起こした男性は、2005年から2009年の間に、インターネットや予想ソフトを使い、約35.1億円の馬券を購入。約36.6億円の払い戻しを受けていました。
これを受けて判決では、「偶然性の影響を抑え」「営利を目的とする継続的行為から生じた」所得として「雑所得」と認定。
結果、ハズレ馬券も含めた馬券購入費が、雑所得の経費として認められました。
雑所得と一時所得とでは、収入から控除できる「経費」の考え方が異なるのです(雑所得編参照)。
当たり馬券の購入費は1.8億円とのことなので、
一時所得とされた場合の税額は恐ろしいものがあります。
優遇が厚い一時所得であったはずなのに、
雑所得であるほうが納税者に有利になるのですから税金は難しい。
先に述べましたとおり、一時所得には「たまたま(偶然)得た」という要素があります。
判決の男性とは違い、一般に娯楽として楽しむ競馬の払戻金については一時所得と考えられます。
この場合、ハズレ馬券は文字通りの紙くずと化します。
ふるさと納税にまつわる一時所得
最近話題のキーワードとして、「ふるさと納税」があります。これは、任意の地方自治体に寄付することにより、寄付額に応じた税額控除が適用される制度です。
税額控除以外にも、自治体によっては地域の特産品をもらえるなどの特典もあり、話題になっています。
このふるさと納税にも、実は一時所得の論点があります。
前述の特産品等の受け取りについて、国税庁は課税対象の「一時所得」である旨の見解を示しているからです。
ではこの場合、具体的な税額はどうなるものか…
ふるさと納税の活用による節税もあわせて、詳しくは税理士など税金の専門家にご相談をされることをおすすめします。
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