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税理士が話す、勤務医のための確定申告
「譲渡所得編」2014.12.03

税理士が専門医にお届けする確定申告シリーズ。今回は「譲渡所得編」のお話です。
執筆:諸留 誕(2014.12.03掲載)

値上がり益にはいつ税金がかかるのか

所得税法では「所得※」を10種類に分類しています。今回のテーマは「譲渡所得」です。お持ちの土地や建物などの不動産や上場株式などの有価証券について、その「値上がり益」に課税しようというのが譲渡所得です。

※そもそも所得とは、「あらたに得られた経済的価値」と考えられています。
 平たく表現すると、「お金が増えたなぁ」というものです。

ところで、モノには価値があります。時間とともに変化を続けるその価値は「時価」と言われます。だとすれば「値上がり益」もまた、その額は変化し続けていることになります。では、「いつ」「いくら」の値上がり益に所得税は課税されるのでしょうか?

答えは言葉の中にある

問の答えは「譲渡(売却)したときの値上がり益の額」です。「譲渡」所得なのだから当たり前と思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。いわゆる「含み益」も「値上がり益」の一つと考えれば、お持ちの上場株の株価が上がった時点で課税するという考え方もあるからです。

それでも所得税法で「譲渡したとき」としているのは、実際に手元の現金が増えてはいない含み益に課税したのでは納税に困る、という点を考慮しているからです。また「譲渡したとき」という一時点に特定するという意図もあります。値上がり益は毎日計算して税金を課税する、なんてことであればそれはもう大変です。

思わず唸る計算方法

前置きはこれぐらいにして、譲渡所得について税金の対象になる所得金額の計算方法を示します。

収入金額-(取得費+譲渡費用)―特別控除

取得費ってなに?譲渡費用ってなに?と一般の方であればうろたえてしまうことでしょう。特別控除にいたっては、税理士をも唸らせる複雑さを孕んでいるものであり、譲渡所得を理解するまでの道のりは遠い。

まずは取得費から

収入金額からマイナスをすることができる「取得費」には3種類あります。「取得価額」「設備費」「改良費」です。

不動産を例に、端的に表現をしていくと、取得価額とはその購入金額です。購入時のリフォーム等による費用や付加設備の購入金額が「設備費」「改良費」です。ここでの注意点は、購入時点から売却時点までの間に価値が減少(減価償却と言います)した部分は控除するということ。したがって、3,000万円で購入したマンションを10年後に売却した場合の取得費は3,000万円よりも少なくなります(実際に計算をすると2,600万円くらい)。

ちなみに、購入時期があまりにも「昔過ぎ」て、購入金額がわからないという場合には、「売却による収入金額×5%」を取得費とすることができます。

続いて譲渡費用

続けて譲渡費用も押さえましょう。譲渡費用は、資産を譲渡するために必要な支出です。不動産で言えば、代表例は仲介手数料です。他に、契約時に負担した印紙代などがあります。

「取得費」も「譲渡費用」も、例を拾い上げれば枚挙に暇がありません。まずは四の五の言わずとも「購入時と売却時の支出に関する領収書等の書類は漏らさず保存しておく」のが、節税への第一歩です。

特別控除、その前に

いよいよ最大の難所「特別控除」を見ていく前に、譲渡所得の「種類」を説明しておくことにします。そもそも10ある所得分類の1つが譲渡所得で、さらに分類があるのか、とウンザリされることでしょう。譲渡所得が難しいとされる所以です。

分類の基準は2つ。「総合課税か分離課税か」と「長期譲渡か短期譲渡か」です。要約しますと…

基準1「総合課税か分離課税か」

総合課税・・・ゴルフ会員権など土地・建物、株式等以外の譲渡
(総合課税とされる所得※を合算して、税率を乗じる)
分離課税・・・土地・建物の譲渡、株式等の譲渡
(他の所得とは合算せずに、税率を乗じる)

※不動産所得、給与所得、雑所得、一時所得、事業所得

基準2「長期譲渡か短期譲渡か」

長期譲渡・・・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超
短期譲渡・・・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下

いざ、特別控除

満を持して特別控除を説明します。譲渡所得の「分類」も学びましたので、総まとめとして分類別に税額計算を整理します。

「総合課税の譲渡所得」の税額計算

【短期譲渡の場合】
 ①収入金額-(取得費+譲渡費用)―特別控除50万円
 ②①×税率(5%~45%の累進税率※)

【長期譲渡の場合】
 短期譲渡に同じ。ただし長期譲渡がある場合には、特別控除は短期・長期合わせて50万円

※復興特別所得税、住民税は別途。累進税率は、所得が多くなるほど税率が高くなります。

「分離課税の譲渡所得」の税額計算

【土地・建物 短期譲渡の場合】
 ①収入金額-(取得費+譲渡費用)―特別控除
 ②①×税率30%(復興特別所得税・住民税別途)

【土地・建物 長期譲渡の場合】
 ①収入金額-(取得費+譲渡費用)―特別控除
 ②①×税率15%(復興特別所得税・住民税別途)

【株式等の場合】
 ①収入金額-(取得費+手数料等)
 ①×税率15%(復興特別所得税・住民税別途)

税理士を唸らせるのはここから先

初見の方には理解に苦しむ税額計算だったと思いますが、税理士はこの程度では唸りません。本当の問題はここからです。

上記「分離課税の譲渡所得」の税額計算については、依然として特別控除の額を記載していません。ここまで説明をしておきながらあえて記載をしていないのは、一筋縄ではいかない事情があるからです。

国税庁のWEBサイト「タックスアンサー(No.3223 譲渡所得の特別控除の種類)」を参照すると、6種類の税額控除が掲載されています。800万円から5,000万円までの大きな金額の税額控除です。控除を受けることができるかどうか確認しようとすれば、微に入り細を穿つ適用要件が待ち構えています。

譲渡所得についてはほかにも、買換特例などの「税金の繰り延べ」や「軽減税率」といった納税者に嬉しい制度も用意されています。とはいえ先述の特別控除同様、迂闊に飛び込むと迷宮入りするほどの難所です。詳しくは税理士など税金の専門家にご相談をされることをおすすめします。

諸留 誕

【執筆】 諸留 誕(税理士法人アイ・パートナーズ)

(税理士/1級ファイナンシャルプランニング技能士)

税理士法人アイ・パートナーズ

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