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肺炎の終末期 苦しみを和らげる緩和ケアへの移行も選択肢に

[2017.5.1]

 日本人の死因の3位である肺炎を繰り返して衰弱した高齢者や肺炎を併発した終末期のがん患者などについて、日本呼吸器学会は、今月改訂する成人肺炎診療ガイドライン(指針)で、抗菌薬の使用などの積極的な治療を控え、苦しみを和らげるケアへ移行することも選択肢とする。

 

 国の統計では、2015年に肺炎で亡くなった人は12万人。その97%が65歳以上の高齢者だ。

 同学会の新たな指針では、患者が治療でわずかに延命できるとしても、苦痛などで充実した時間を過ごせないと複数の医師が判断した場合、人工呼吸器や抗菌薬などによる治療以外に、緩和ケアも選択肢として患者に示す。意思が確認できない場合は、家族が推定する意思を尊重し、医療チームで方針を決める。

 

 診療指針作成委員会委員長の長崎大学副学長、河野茂さんによると、のみ込む力が弱り、気道に細菌が入って起こる高齢者の誤嚥(ごえん)性肺炎は、抗菌薬の投与で一時的に良くなっても再発しやすい。高熱と息苦しさを繰り返し、寝たきりになることも多いという。そこで「本人が何を望んでいるかを尊重し、治療を控えて苦しみを取り除くケアを優先することも選択肢として加えた」と説明する。

 国立長寿医療研究センター病院(愛知県大府市)の終末期ケアチームの部屋に昨冬、医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、栄養士らが集まった。高齢者総合診療科医師の川嶋修司さんが、誤嚥性肺炎で入院中の80歳代の男性について「抗菌薬治療の差し控えを検討するとともに、人工栄養の補給などは行わず、苦しみをとる緩和ケアに移行します」と報告した。男性は過去に脳梗塞(こうそく)を発症し、認知症もあり、寝たきりで介助が欠かせない。

 川嶋さんは、治療効果が期待できず、過度な治療が男性の苦痛を長引かせてしまうことを家族に説明し、治療の差し控えの同意を得ていた。終末期ケアチーム医師の西川満則さんも「判断に至った過程は妥当」と了承した。同病院では、緩和ケアへ移行する際、医師の独断に陥らないように、終末期ケアに通じるスタッフが手続きを確認する。

 指針改訂を西川さんは「医者には『治さなければ』というDNAが刻まれている。治療が患者本人のためにならず、やめ時でも躊躇(ちゅうちょ)する場合、後押しになる」と評価する。一方、川嶋さんは「治療を差し控える場合は、本人や家族の同意を得たうえ、複数の専門家で検討する必要がある」と手続きの大切さを強調する。

 

 肺炎患者への積極的な治療の差し控えという選択肢は、治療中止などを決める手順を示した厚生労働省の指針を踏まえたもの。

 厚労省の指針は、富山県の病院で医師が入院患者の人工呼吸器を外して死なせたとして書類送検された問題を受けて、2007年にまとめられた。治療の中止などを決める際の手続きとして、

〈1〉医療従事者が患者に情報提供と話し合いを行い、本人の決定を尊重する

〈2〉本人の意思が不明ならば家族が推定し、できなければ患者に何が最善かを医療従事者と家族が話し合う

〈3〉複数の医療従事者で判断する――などを示した。

 

 口から食べられなくなった高齢者への人工的な水分や栄養の補給法について、日本老年医学会が12年に発表した指針でも同様の手続きが盛り込まれている。

 老年医学会の指針作成に携わった東京大学特任教授の会田薫子さん(死生学)は「成人肺炎の指針は、安らかな最期を迎えるための医療のあり方を医療関係者や市民が考え直すきっかけになる」としつつ、「積極的な治療が適さない肺炎があるという丁寧な説明も求められる」と指摘する。

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