専門医の医師の求人/募集/転職スペシャルインタビュー > 長瀬 淑子 氏 /公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン事務局長

スペシャルインタビュー
	長瀬 淑子

医療と社会を結ぶ仕事
人のためだからこそ一生懸命にできる

長瀬 淑子 氏
公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・
チャリティーズ・ジャパン事務局長

病気のお子さんと付き添うご家族が、自宅にいるようにゆったり過ごせる第2のわが家。
ドナルド・マクドナルド・ハウスは、困難な病気を患っている児童及びその家族を支援するための滞在施設として、1974年にフィラデルフィアに世界初のハウスが誕生して以来、これまでに世界33ヶ国327ヶ所に開設されている。
ハウスでは、日常生活がスムースにおくれるように、自炊ができるキッチンやリビング、ダイニング、ベットルームを装備し、一泊1,000円で利用できるようになっている。
長瀬淑子氏は、東京大学医学部附属病院医局長を経て、当財団および施設立ち上げの中心人物の一人である。このハウスは2013年度、厚生労働省が選定する「小児がん拠点病院」の全国15ケ所のうち7か所に併設あるいは開設が予定されている。大学病院時代から医療機関と行政の橋渡しに奔走し、小児医療における国の重要取組み課題の体制として、必要不可欠な存在となるまでに導いた立役者でもある。
また現在では、女性医師のあらゆるニーズを網羅し、キャリア支援に特化した事業も運営している同氏に、医療と社会を結ぶために力をつくしてきたこれまでのキャリアについてお話を伺った。

医療現場へ社会が関わる効果

ドナルド・マクドナルド・ハウスは現在、全国に8ハウス(2013年.9月現在)あり、今後も拠点都市にいくつか開設が予定されている。
「当初は本当に理解を得るのが大変でした。いろんな知恵を出して、企業や病院、行政を口説いてここまで先頭に立って開拓してきましたが、最初のハウスができた時は心から嬉しかったです」
「ハウスの機能には様々なメリットがあります。医療現場はちょっと閉鎖的で、患者と医療者というのは非常に緊張した関係でもあります。結構クレーム産業ですから。そこに社会が少し介入することで、うまく収まる可能性があるんです」
「例えば病院も親も、子供の付添いの過程で様々なストレスが溜まるんですが、ハウスでゆっくりしてもらうことで、お母さんやご家族のケアにもなる。そうすると、それぞれが子供の治療に専念出来る。子供にとっても親や家族が傍にいることが治癒力を向上させる。そして社会復帰のトレーニングにもなります」

支えてくれているスタッフのほとんどがボランティアで構成されている。
「患者さんやご家族同士の交流にもなって、医者や看護師、ボランティアなどが医療現場で頑張っているなど、良い情報や噂が外部に伝わったり見させることが出来ます」
「また、ハウスでお互いが悩みを打ち明けることで、自分だけが大変じゃないということが分かります。その環境をボランティアの方達が作ってくれています。今、全国に1400人、営利目的ではないので寄付で成り立っていますが、これまでずっと日本の風土に合ったボランティアに作り変えて育成してきました」
「医療を支援する社会や民間の仕組みを日本に定着させたかったんです。初めは東大に勤めながらやっていたんですが、これから日本に作っていくという時に片手間では出来ませんでした。当時の上司に引き込まれて、医療現場と行政が分かる人間が他にいないということで、私が担ってきました」

東京大学医学部附属病院では情報システム化を推進

マクドナルドハウス設立に関わるきっかけともなった大学病院での仕事では、当時の先進的なコンピューターシステムの導入に貢献した。保守的な医療現場の業務効率化が患者のサービス向上にもつながると信じて、組合などの反対にあいながらも、コツコツと研究室を回り、便利さと有用さを訴えつづけてきた。
「コンピュータがこんなに一般的になる前、私は病院の中で端末背負って『行商』してたんですよ」
「あの頃は3時間待ちの3分診療っていうのが日常的でした。受付も保険証の内容を手書きで写していて、たくさんの人が順番待ちしていました。いくら最新技術があっても、医療体制が旧態依然のままでは何の役にも立たない。そこを結ぶ人がいないと患者さんの為にはならない。そう思って一心に繋いできました」

その後医局長として、地域情報システム、遠隔医療や病院連携システムなどの
構築を推進した。
「常に『エンドユーザー』というか『患者さんの為』と思ってやっていたので、
例えば病院と診療所や遠くにいる患者さんとの間で、『両方で診られる様な
システムがあると良いな』と考え、当時の最新技術や情報機器を使って
遠隔医療システムなども構築しました」
「また電子カルテなどは20年ぐらい前に先駆的にやりました。当時カルテは、
医師のスキルの集大成という感覚でしたので、患者のものというよりは当然
医療機関のものという考え方が一般的でした。今はカルテ開示。
それからセカンドオピニオンも普及して患者寄りに進みつつあります。
やはりこうした情報システムの発達のおかげだと感じています」

女性医師のキャリア支援について

これまでのキャリアにおいて、医療体制を支える仕組みの構築だけでなく、そこに携わる人にも早くから着目し問題意識をもっていた。
「医局にいた時に感じたのは、女子学生は元気で優秀な子が多いにもかかわらず、医局長や他の重要なポストになればなるほど女性の割合がとても少なかった。女性の医師も増えてきたのに、なぜ活躍の場が少ないの?とずっと思っていました」
「実際には超男性社会なわけで、医療関係の中にずっといた者として、女性医師のためにどこかで何か役に立ちたいと思っていたわけです。」

女性医師に特化したキャリア支援サービスが8年目を迎える。
「インターネット主体のため30代の医師がとても多いんですが、ただでさえ仕事と勉強で忙しく、自分の今後のキャリアについて相談するところが限られています。それでいろんな相談に応えられる体制を作りたかったんです」
「これだけ働き方が多様化している現代において、医師ももう少し自分のキャリアを自分で切り拓く選択肢が増えてもいいと思うし、これまで継続できたのは社会が必要としていることの表れでもあると思っています」

自分のキャリアチェンジについて

弊社代表・徳武と	長瀬 淑子先生
弊社代表・徳武と長瀬先生

最後に、東大病院の医局長を辞める時の葛藤を聞いてみたところ次のような言葉が返ってきた。
「これまで働くうえで、肩書や昇進を意識したことはなかったです。それよりも、目の前の自分の役割を一生懸命に果たし、たまたま熱心な上司や先輩に教えられた中で、自分が育っていったんじゃないかと思います。今思えば、医療に詳しくて行政にネットワークがあって、実現するための行動力と交渉力をもっているという条件。それからやっぱりこの事業に熱い思いを持っているとなると自分に最適の仕事と思いました。
それと自分も患者だし、女性だし、子供もいるのでお母さんの気持ちもわかるし」
人のために尽くし、医療と社会を結ぶ仕事を直向きに体現してきた姿がとても印象的だった。

(取材・文・河本瑛爾)


長瀬 淑子 氏 (公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン事務局長)

プロフィール

青山学院大学卒業。
1989年 東京大学付属病院中央医療情報部助手。
1992年同医局長。
在職中は日本医療情報学会評議員を務め、研究分野は地域情報システム、遠隔医療、病院連携システムなど。
1999年第25回日本医学会総会展示幹事。
放射線医学フォーラム幹事、医療フォーラム事務局長、武見太郎記念国際シンポジウム事務局長、愛知万博国連館内展示事務局長などを担当。
1999年4月よりドナルド・マクドナルド・ハウス財団事務局長。滞在施設の建設・運営、ボランティア活動の支援などを行っている。独立行政法人国立成育医療研究センター倫理委員も務める。
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